技術コラム

歪みを抑える溶接のポイント

自動車や建設機械、農業機械など私たちの身の回りの製品は多くの部品が組み合わさって完成しています。中でも、金属同士を接合して製作する金属加工品の割合は非常に高くなります。そんな金属加工の中でも熱によって金属を溶かして接合する「溶接」を用いた部品は建設機械や農業機械の外装パーツから内部の構成品まで幅広く使用されています。

熱を用いて金属同士を接合する溶接加工において、製品の「歪み」抑える事は非常に重要なポイントとなります。今回は、歪みの原因と、対策についてご紹介させていただきます。

溶接とは

溶接とは、言葉の成り立ちからも分かるように「金属を溶かして接合する」加工方法の事です。加熱や加圧することで金属が融点に達した際に溶け始める性質を利用した加工となります。接合させたい金属の一部を溶かして接合し、冷却させることで固定され接合できます。

溶接は「気密性が高い」「短時間での接合が可能」等、様々なメリットを有した加工方法ですが、金属に熱を加えて接合させる性質上、金属の「加熱」「冷却」に伴うデメリットが生じてしまいます。

今回は溶接の際に生じてしまう「歪み」についてご説明させていただきます。

溶接と歪みの関係

「歪み」とは溶接加工を行う際の温度変化に伴う、金属の膨張・収縮に伴う変形の事を指します。金属は加熱されると膨張し、冷却されると収縮する特性があります。部品全体を加熱・加圧し加工を行えば均一に熱が加わるため膨張や収縮は発生しませんが、溶接加工の特性上、金属の一部に対して加熱・冷却を行うため加熱されていない周辺部材との間に膨張・収縮の差が生まれ、最終的に歪みに繋がってしまいます。そのため、現在の溶接方法ではほとんどの場合に歪みが発生してしまうため、しっかりと対策を講じる必要がございます。

年々、部品に対する精度のご要求や、外観の見栄えが求められるようになってきております。お客様の要求、用途を満たすためには歪みを抑えた溶接を行うことが非常に重要となります。

溶接の歪み対策

溶接の歪みと一口に言っても、製造する製品の形状や材質など様々な要因によって「収縮」「曲がり」「反り」など種類が変わります。またそれらが組み合わさり複雑な変形が発生してしまう可能性もあるため、溶接前に歪みの原因を推察し、対策を講じることが非常に重要となります。

歪みの対策について、大きく4つのポイントに分けてご説明させていただきます。

・溶接順序の検討
・歪みを織り込んだ設計
・治具による歪み予防
・溶接後の歪み矯正

溶接順序の検討

溶接を行う前に、溶接による歪みの発生原因を推察し取り除いたり、極力歪みが小さくなるような溶接順序の検討を行うことが重要です。

溶接個所の検討

 溶接後の製品形状やお客様の用途から溶接個所の順序を検討します。溶接による熱が集中することで歪みが大きくなってしまうため、熱が分散する溶接順序を検討することが重要です。

歪みを織り込んだ設計

溶接による歪みや変形を予め見込んでおき、それらを織り込んだ設計とすることで完成品自体の歪みを抑えることが重要です。「予歪法」や「逆歪法」とも呼ばれ、予め変形量を見込んだ設計としたり、溶接前に逆方法に変形を加えてセットし溶接を行います。

歪みを織り込んだ設計を行うために、溶接条件の検討を行い、歪みの大きさを詳細に推察することが重要です。

治具による歪み対策

溶接による歪みを100%抑えることは難しいため、治具等を用いて変形が生じないように強く固定することも非常に重要となります。クランプや固定治具などを用いて強引に変形を抑えます。一度治具を作り込んでしまえば、作業者の技量の影響が少ない安定した品質で溶接を行うことが可能です。しかし、変形に対して固定する力が大きすぎると溶接割れ等が発生しやすくなるため、注意が必要です。

溶接後の歪み矯正

歪みや変形を溶接後に様々な方法で歪みを矯正する対策です。

①局部加熱矯正法

 溶接部やその近辺を局部的に加熱し、加熱による変形を用いて歪みを小さくする方法です。

②機械的矯正法

 プレス・ローラ・ピーニング法などによって、機械的な力を加えて矯正する方法です。収縮により歪みが生じている溶接部を引き延ばして矯正する方法と、曲げ変形を加えて矯正する方法などがあります。

③加熱加圧法

 ジャッキとプレス等を併用し、加熱と加圧により歪みを矯正する方法です。

当社の溶接の強み

このように、溶接と歪みは切っても切り離せない関係となっております。お客様のご要求を見たす、精度の高い溶接加工を行うためには、溶接前の設計段階での対策と、溶接後の歪み矯正の対策の2つの対策が重要となります。

当社であれば、自動車業界向けに様々な部品をお納めしてきた豊富な実績と、厳しいご要求をクリアしてきた経験がございますので、お客様に最適な溶接条件の検討が可能です。また、社内には高い技術力を有した溶接工がおり、自社立ち上げにこだわった溶接ロボットシステムも有しておりますので、お客様の製品に併せて、溶接方法も検討させていただきます。

溶接に関する製品事例

続いて、実際に当社が製作した溶接加工を用いた製品事例をご紹介いたします。

歪みを抑えた溶接加工のことなら、当社まで!

歪みを抑えた、高品質な溶接加工でお困りごとをお抱えのお客様がおられましたら、ぜひ当社までお声かけください。

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